建築物を建てるのに必要なものは、と聞くと、まずなにを思い浮かべるでしょう?普通考えるのは「設計図」と「建てる人」ではないかと思います。
しかしその上で守らなければならない決まり、制約というものがあります。一つは、この敷地にはこれくらいの建物しか建ててはいけないよ、というような法律の制約。そしてもう一つが予算の制約です。
前者は意匠設計などがそれを守って図面を仕上げます。そして予算の部分の制約のチェックは積算技術者が担います。
そこは建てる側、いわゆる施主の方々にとってかなり重要な判断基準となります。その大きなウェイトを占める部分の役割を任されているということを、まずは知ってもらいたいです。
建築積算は、意匠設計や構造設計などと違い主観が入りにくい仕事です。
基準に則って正しい過程で導いた答えは、誰に指摘されようとも揺らぐものではありません。仮に第三者から「これは間違いではないか?」と指摘されたとしても、自分の考えと計算過程、根拠をきちんと説明した上で「この数字になりました」と主張することが出来ます。
ただ、基本設計図のような設計途中段階の図面をもとに、どう納まるのか、ここにはこういうものが必要だろうと想像力を働かせる
部分もあって、そこから一定の数字を導くのは建築積算技術者としての腕の見せどころです。これにはやはりある程度経験がものを言います。こなしていけば力はつくし、判断材料の武器が増えて、自分の理論でお客さんが納得してくれるという面白みに繋がるのだと思います。
また、多くの物件に携われるというのも積算の面白さの一つではないでしょうか。
生涯扱う件数は、設計屋さんや施工管理の何十倍。
加えて、たとえば設計事務所では会社によって用途が偏ることが多いですが、用途を限定していない弊社では、庁舎や学校、競技場や万博のパビリオンにいたるまで多種多様な建物の図面を目にすることができます。
街を歩いていても、それだけ自分の携わった多くの建築があるということです。
そして当然、その物件の数だけスタートとゴールがあります。設計だと一年かけてやるところを、積算ならば一週間から二週間程度でゴールが来ます。それだけ多くの達成感が味わえるというのも積算の特徴であり魅力ではないかなと思います。
エステム建築事務所では、若い子がやったことをきちんとチェックをして、お客さんに出す前に間違いを指摘してあげて、…という行程を、ひたすら繰り返します。根気のいる作業だけど、成長のために時間をかけて付き合います。
そしてなるべくジョブローテーションをして、全員がすべてのセクションをできるようになる、というのが方針です。
簡単に実力をつけさせようと思ったら、本当はひとつのことをばかりをやらせるのがいいに決まっています。同じ作業だけを反復すればそこのスキルは確実に上がるので、会社経営的に考えれば、そちらの方が絶対いい。実際そのやり方を取っている積算事務所も多いです。
ジョブローテーションをすると、一所懸命ある部分の仕事を覚えたのに、次のセクションに進んだ時にまた1からのスタートになって、それもできるようになったらまた次のセクション…となるので、絶対にその瞬間のスキルは落ちてしまいます。
しかし建築積算に携わる上で、「私はこの部分のことしか知りません」という姿勢はどうだろうと思うのです。
この仕事は一人でやるわけではありません。複数人で取り組むので、例えば今やっている業務の反対側のことも理解していると、見方も変わるし、打ち合わせもスムーズになります。
第一、何年も何十年も一個のことをずっとやり続けるだけって面白くない。全体を分かるようになってこそ、積算という仕事の面白みを理解できるようになるのではないかと思います。
積算は細部から積み上げるけれど、最終的に俯瞰で見て違和感に気付けることも大事です。その視点は、いろんな経験を積み重ねて行って、徐々に引き出しが増えていく中で自然と培われていくものかなと思います。
みんな一つずつやれることを増やして確実に成長していっています。できていない人はいないから、安心して飛び込んでほしいですね。
エステムは数字も勿論見ているけど、若い社員たちへの関心や、「この子を一人前の技術者に育て上げよう」という思いは強いと思います。社員の成長は会社の成長にもつながります。建築家としてエステム建築事務所でおおきく成長してほしいというのが我々の願いです。